自然エネルギーの普及を促進させるためのスイスの取り組み

昨年の日経の記事だが、画期的な取り組みを紹介していて感銘を受けた記事だ。自然エネルギーを普及させようとする際、日本ではとにかく「消費者の良識や罪悪感に訴える」ことに走りがちだ。私には彼らがちっとも頭を使っていなくて、安易な道に走っているとしか思えない。現に、消費者は醒めたもので、一部の有識者の切実な訴えなど馬耳東風だが、エネルギー価格が高騰すれば途端に自己防衛のために倹約に走っている。自然エネルギーを普及させたい側と、消費者とがうまくかみ合っていないのだ。以下はスイスの取り組み:

水・風・火 --- 選べる電気
家庭に流れてくる電気が何から作られるか。日本ではあまり意識しないが、スイスでは消費者がそれを意識するだけでなく、電源を選べる。電力を供給するジュネーブ産業公社は2002年6月、各家庭が水力、火力などの電源を自由に選べる仕組みをスイスで初めて導入した。今ではチューリッヒやベルンなど各州に広がりつつある。

ねらいは環境対策。水力の豊富なスイスだが、これ以上ダムを増やすのは自然破壊につながりなりかねない。火力を減らして二酸化炭素の排出量減らすためにも、風力、太陽光、ゴミ発電などの再生可能エネルギーを増やす必要がある。新エネルギーの開発・導入にかかる高いコストを消費者に一部負担してもらう試みだ。

エネルギーのイメージをはっきりさせるため、水力発電の契約には「青」、風力発電太陽光発電など死ねエネルギーは「緑」と名付けた。産業公社のお勧めは「青80%と緑20%」の組み合わせ。一家四人の標準世帯(一戸建て)の場合、年間料金は火力より58スイスフラン(約5700円)、水力より45スイスフラン割高になる。

新エネルギーの発電コストは高く、緑の料金が割高になるのはやむえない。それを吸収するため、送電コストの削減など先月から電気料金を昨年に比べておよそ10%、標準世帯で100スイスフラン前後下げた。値下げで得した分を割高な「緑」に回してもらう作戦だ。環境重視の消費者には好評で、緑を加えた契約はここ2ヶ月で3万8千件、全体の16%に倍増した。残りは水力が80%、天然ガス火力がわずか4%。原子力はゼロだ。

ジュネーブ北部に住むルネ・ガイユさん(78)は2年前、緑100%の契約を選んだ。料金は火力や水力より20%以上高い。それでも「私はジュネーブの森、湖、山が好き。プラスアルファで自然のために貢献できるなら」と満足げだ。

市村孝二巳@ジュネーブ
2007年2月17日(土)日本経済新聞アーバンBizより