バチカン・エクソシスト作者: トレイシーウイルキンソン,Tracy Wilkinson,矢口誠出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/05/29メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 41回この商品を含むブログ (29件) を見る

エクソシストとはキリスト教の悪魔払い師のことである.日本人には,中世や映画を思わせる縁の薄いものだが,イタリアではエクソシストを求める人々が増えているらしい.バチカンの学校でもエクソシストのコースが開設されたという.本書では,現状,実際に悪魔払いを行っている聖職者であるエクソシストのインタビュー,悪魔払いを受けている人間達のインタビューなどが紹介されている.著者はLAタイムズの人間で,サブカルチャー的な本とは異なり,客観的なアプローチで書かれている.
 
宗教とは科学では証明されない価値観,論理的には説明出来ない価値観に基づいて存在している.信仰は,信じることのみによって支えられているのである.そしてそれ故に,論理的には説明出来ない「悪魔」という存在も認めざるを得ない.キリスト教の本山のバチカンにしてみれば,人々に乱用される恐れのある「悪魔払いの儀式」は出来るだけ目立たせたくない.本来の活動目的ではないと思っている.バチカンエクソシスト人気の高まりを,複雑な思いで接しているのだ.
 
正直にいって,キリスト教と日常が一体化していない日本人には,彼らの言動を理解するのは難しい.しかし,より客観的に人間のメンタリティーを理解する題材として読むと面白いと思う.またキリスト教文化を学ぶ手段の1つにもなるだろう.